03.業務解説/医療法人設立


医療法人の設立

1 医療法人制度の歩み



(1)医療法人制度の成立

私的医療機関は、わが国の医療の根幹を形成してきました。その維持・発展を目的として、資金の集積を図り永続性を確保する為には、法人格を付与する必要があります。ところが、医療事業は非営利のものですから、商法上の会社が病院等の経営主体となることはできません。また、全ての診療所・病院が積極的な公益性を求める民法上の公益法人となることも困難です。従って、既成の法人制度によらず、容易に法人格を取得することが出来る制度を設けることとなり、昭和25年に医療法に「第4章 医療法人」を追加して、私的医療機関としての医療法人制度が創設されました。

平成19年4月に改正医療法(後述)が施行される前に設立された医療法人には、①出資持分の定めのある社団医療法人、②出資持分の定めのない社団医療法人および③財団医療法人の3種類があります。社団医療法人が全体の90%以上を占めており、そのうち「出資持分の定めのある社団医療法人」が大部分です。出資持分の定めのある社団医療法人は、解散したときには、合併及び破産の場合を除いて、残余財産を出資持分に応じて分配することが可能であり、現在も「経過措置型医療法人」として存続が認められています。


(2)一人医師医療法人

昭和60年に医療法が改正され、医療法人の設立要件から、医師または歯科医師の最低人数に関する制約がなくなりました。その結果、医師または歯科医師が1名のみの診療所も医療法人化が可能となり、認可の要件が簡略化されました。一人医師医療法人は、殆どが「出資持分の定めのある社団医療法人」として設立されていました。

(3)医療法人の公益性の強化

平成19年4月に施行された改正医療法の下では、新しく設立する医療法人は「出資持分の定めのない社団医療法人」及び「財団医療法人」の2種類に限定され、「出資持分の定めのある社団医療法人」を新規に設立することが出来なくなりました。この改正法施行後に設立された医療法人が解散したときには、合併又は破産の場合を除いて、残余財産は国等に帰属します。こうした医療法人の公益性の強化に伴い、出資持分の定めのない社団医療法人の活動の原資の調達方法として、「基金制度」(後述)を採用することができることになりました。

2 現存する医療法人の2形態



①経過措置型医療法人

平成19年に改正医療法が施行される前に設立され現在も存続する「出資持分の定めのある社団医療法人」は、公益法人と営利法人の両方の性格を兼ね備えており、両者の中間に位置します。

(1)公益法人的性格

①剰余金の配当が禁止されている。
②設立、定款・寄付行為の変更、合併などについて認可が必要である。
③附帯業務の制限、決算の届け出など種々の規制がある。

(2)営利法人的性格

合併及び破産の場合を除き、解散の際に出資持分に応じて残余財産を分配することが可能である。

②平成19年4月以後に設立された医療法人

(1)公益法人的性格の強化 

解散時の財産は国等に帰属します。

(2)基金制度

1。 基金制度の目的
基金とは、社団医療法人に拠出される財産であり、法人が拠出者に対して返還の義務を負うものです。医療法人の活動資金を調達し、その財産的基礎の維持を図ることを目的としています。

2.定款における定め
定款に「基金を引き受ける者の募集をすることができる」という条項を入れることが必要です。

3.募集事項の決定
基金の募集をするときは、その都度、募集する基金の総額、金銭の払い込みの期日・期間などを定める必要があります。

4.基金の申込・割当
法人は、基金の引受けの申込をしようとする者に募集条項を通知し、その後に基金の割当を受ける者及び割当額を定める必要があります。

5.基金拠出契約
医療法人設立後、法人と拠出者との間で基金拠出契約を締結します。

6.基金の返還
基金の返還には、定時社員総会の決議が必要です。

3 医療法人の設立



1 設立の要件

①病院、医師または歯科医師が常勤する診療所・老人保健施設を開設する社団または財団であること。

②医療法人の業務を行うに必要な資産を有すること。

③定款または寄付行為により、役員、診療所の開設場所など法定事項を定めていること。

④都道府県知事(複数の都道府県に跨るときは厚生労働大臣)の認可を受けること。

⑤設立の登記をすること。

2 医療法人の構成

①社員
社団医療法人は原則として3名以上の社員を構成要素とする。

②理事
原則として3名以上。理事会は執行機関。理事長は原則として医師または歯科医師である理事から選出し、医療法人を代表する。

③監事
1名以上。会計と理事(長)を監査する。

④社員総会
医療法人の最高意思決定機関。定款の変更・社員の除名・解散及び合併等については総会の議決が必要である。

3 医療法人の業務

(1)本来の業務
診療所、病院または介護老人保健施設の開設

(2)附帯業務
本来の業務に支障を来さないこと及び定款又は寄付行為に規定することを要件として、医療関係者の養成・再教育など一定の附帯業務ができる。

4 医療法人と税務

①診療報酬は法人に帰属し、経費を控除した利益に法人税・住民税が課せられる。

②事業税は、社会保険診療報酬については非課税。自由診療報酬に関しては、利益から理事長報酬を控除して課税される。

③社会保険診療報酬については、個人事業と同率の概算経費が認められる。報酬額が5000万円以下ならば、(報酬額×0.57+490万円)と実額経費との選択が可能。

④交際費は、期末資本金が1000万円超5000万円以下ならば年間300万円が認められる。

⑤同族会社の留保金課税が適用されない。

⑥理事長(院長)は、個人事業主から給与所得者となる。役員報酬から給与所得控除を差し引いた金額が、所得税・住民税の課税所得となる。

5 医療法人のメリットとデメリット

平成19年4月1日以後に設立される医療法人においては、「医療法人の解散時に残余財産を出資持分に応じて分配する」という従来のメリットはなくなりました。しかし、法人化により得られるメリットはデメリットをはるかに凌駕しています。

医療法人のメリット

①分院開設が可能になる     
法人化により、個人経営の診療所には認められていない分院開設が可能となり、老人保健施設、訪問看護ステーション等の経営ができる。。

②税務におけるメリット    
個人の所得税・住民税の超過累進課税のみから法人税・ 法人住民税との併用で節税メリットが得られる。

理事長の所得について、給与所得控除が適用される。

理事に配偶者や後継者を配して所得を分散することにより、節税メリットが得られる。

退職金(所得税・住民税の大幅軽減が可能)の受領により老後の生活設計が安定する。

借入金利子、生命保険料等の経費算入できる支出項目が増える。

赤字の繰越し控除が7年間可能(個人は3年間)。

自由診療への消費税が医療法人設立から2事業年度非課税となる。

③事業承継がスムーズにできる
個人開設の場合は名義変更手続ができず、院長が廃院をしてから後継者が新たに開業・開設の手順を踏まなければならない。法人の場合は、予め後継者を理事・社員に配し、理事長と病院・診療所の管理者を変更するだけで済む。 

④資金繰り負担が軽減
個人開業医異なり、社会保険診療報酬支払基金の受取時に源泉徴収されないので、資金繰り負担が軽減される。また、金融機関から融資が受けやすくなる。

医療法人のデメリット
 ①剰余金の配当が禁止される
 ②交際費の損金算入が制限される 
 ③事務手続が増加する
 ④社会保険が強制加入となる

6 設立の手続

(1) 定款・寄付行為[案]の作成
(2) 設立総会の開催
(3) 設立認可申請書の作成
(4) 設立認可申請書の提出(仮受付)
(5) 設立認可申請書の審査(面接等を含む)
(6) 設立認可申請書の本申請
(7) 医療審議会への諮問
(8) 答申
(9) 設立認可書交付
(10) 設立登記申請書類の作成・申請(法務局)
(11) 登記完了(法人成立)

以下、東京都の例となります。

説明会の開催→設立認可仮申請書の受付(病院・介護老人保健施設の場合は事前相談が必要)→設立認可審査→医療審議会への諮問(本申請)→答申→設立認可書交付→設立登記申請→登記完了(法人設立)

医療審議会が概ね半年毎に開催されますので、設立の機会は年2回となります。平成25年度の設立認可は概ね以下のスケジュールで行われます。

※本年度の説明会は1回のみです。

 説明会仮申請審議会認可書交付
第1回26/07/18(金)26/09/01(月)~26/09/05(金)27/1月末27/2月中旬~下旬
第2回同上27/03/02(月)~27/03/06(金)27/7月末27/8月中旬~下旬


7 設立のチェックポイント

以下、東京都の例となります。

①出資した者は必ず社員となる。出資していなくても社員となれる。

②監事は理事を兼任できない。監事は社員でもよいが、出資は不可。設立しようとする法人と利害関係が深い者(理事長の配偶者など)は不可。

③医師または歯科医師のほかに、診療所の場合は看護婦、歯科診療所の場合は歯科衛生士が常勤で1名以上いることが必要。

④負債は原則として医療法人に引き継ぐことができる。但し、法人化前の運転資金、消耗品類の取得に要した費用に係る負債は引き継げない。負債の引継ぎには債権者の承諾及び根拠資料を要する。

⑤原則として初年度の年間支出予算の2ヶ月分に相当する運転資金が必要であり、預貯金・医業未収金などの換金が容易なものが要求される。

⑥診療所などは賃借でもよいが、賃貸借期間が10年以上であることが必須。



設立認可申請及び設立登記申請には、公的手数料及び登録免許税はかかりません。
行政書士費用については、お問い合わせ下さい。